竹内過去コラム
以前、フリーペーパー「あいかる」に寄稿したコラムです。
あいかる2019年3月号寄稿
「まゆみのやいまいま」
みなさまはじめまして。昨年8月にオープンした、日本最南端の小劇場ゆいロードシアターのスタッフ竹内真弓と申します。
劇場共々、よろしくお願いいたします。
みなさんガリガリ―ってご存知ですか?ガリガリ―。
先日上映させていただいた島猫映画「Nyaha!」の仲程長治監督と松島プロデューサーとお酒をご一緒した時に「劇場に食べ物の名物があるといいよね」という話になりました。確かにいい。あこがれる。うーん、と考えていたら「ガリガリ―って知ってる?」と松島さん。つまりは今でいうところの紅芋チップスで、薄くスライスした紅芋をかりっと揚げて、塩や砂糖をふったもの。石垣出身の仲程監督はご存知で、40年前位には市場や商店で売っており、新聞紙をメガホン型にくるっと丸めたものの中に揚げたてを入れてくれたとか。それを映画館に持ち込んで食べた記憶もあるそうです。紅芋タルトが人気になるにつれ影が薄れてきたらしい(これは公設市場のおばー談)。
珍しいものではありませんが、揚げたてを新聞紙に、というところにそそられました。さっそくゆらてぃく市場にて「沖夢紫」を買ってきました。
①よく洗う。②スライサーで適当にスライスし10分水にさらす。③水気をよく拭き低温の油でカラッと揚げ熱いうちに塩をふりかける。以上の手順で作ってみました。うん。はたして、みなさまご想像通りのあの味でした。冷めるとよりガリガリとした食感になり、手が止まらなくなる素朴なおいしさ。なるほど、映画を観ながらみんなでガリガリ食べるのも楽しいかもしれません。…ガリガリガリガリうるさいかな?
作ってみました
素朴な美味しさ
あいかる2019年4月号寄稿
「まゆみのやいまいま」
みなさんお米は好きですか。
私は出身が米どころ新潟県上越市ということもあり、白飯には一家言あります。それにしても石垣島では5月末に新米が食べられるということを知った時には本当に驚きました。米どころの田植えはだいたい5月上旬からですよね。
現在八重山の稲作は2期作が主流ですが、その普及に尽力した「八重山の宮沢賢治」こと仲本賢貴さんをご存知でしょうか。
産業の発展に伴い農業の分野でも変化が起こっていた大正13年頃、初めて県が八重山に稲作団地を作ります。それまで栽培されていた在来米では収穫量も少なく1期作が主流でしたが、八重山郡農会技手であった賢貴さんは現状の改善を願い、少しでも収穫量を増やすために内地より何種類もの「蓬莱米」(台湾で改良された新品種)を取り寄せ試作に励みます。けれど気候風土に合わず失敗が続き、ついにほとんどの農家が諦めかけた頃、賢貴さんは台湾より、当時持ち出しを禁止されていた品種「台中65号」の籾を背広の襟の裏に縫い付けてまで持ち帰ります。昼夜田に出ては水の加減や害虫など徹底して研究し、ついに八重山の風土に合う2期作を確立したのです。収穫量は2倍になりました。
日の出とともに田へ行き日暮れに帰り、足を洗った後は廊下で寝てしまうというくらい2期作の成功に命をかけていたそうです。さらには珈琲栽培の成功という夢もあったそうですが、病に倒れ、52歳の若さで台湾にて亡くなってしまいました。賢貴さんの育てた珈琲、飲んでみたかったです。
八重山産のお米を食べる際、そんな背景があったことをふと思い出していただけたらと思います。実は夫の曽祖父なのです。
※写真左から3人目が仲本賢貴
※参考文献1:「八重山を学ぶ」刊行委員会(2018)『八重山を学ぶ』沖縄時事出版.
※参考文献2:大浜賢仁様から仲本貞子様へのお手紙